Hindy Quest

はじめてのたたかい

科学の国アメリカ 

 id:jounoさんの昨日のエントリーへのコメントは科学的結果の宗教的な意味をよく考えていてとても共感できます。ここで妥協するとどこまで科学が後退してしまうかわからないという危機感の表明も理解しています。
 しかし、まだいいたいことがのこります。
 アメリカは科学の世界最大のスポンサーでもあります。アメリカの大学で研究費をもらって研究する日本人科学者も大勢いるわけです。
そのアメリカの大統領ブッシュのID論への発言の真意を理解することができないままでは、このエントリーのシリーズはおわれません。

宗教の役割

 というわけで続けさせていただきます。
 科学はかつて宗教がカバーしていた範囲に深くはいりこんでしまったために、
かつて宗教の独壇場であった教育のことももっと深く、よく考えねばならなくなっています。現在、公式に宗教を否定している一部の国以外では、どの国でも宗教界は教育界とつながっています。特にアメリカはキリスト教を守るためにつくられた国家です。
 たとえばですね。
 アメリカの公立学校は固定資産税で運営されているそうで、貧民地区の学校は予算がすくなく、低い給料の経験の浅い教師が人種間の教育レベルのばらつきを押さえたり、暴力やドラッグなどの問題に対処したりに追われる状況があると聞きます。だから上流階級は子供を私立に通わせるわけです。教育問題はアメリカの大関心事なわけです。つかえる予算は当然ないです。
 で、ここは想像なんですが、
「全ては遺伝的に決定されているんだから努力しても無駄だ。」
「人生に目的なんかない。生きていてもしょうがない。」
というようなことを言う問題児にまともに向き合っていくのは宗教しかないでしょう。
 あと最初のエントリーに書いた「進化論の利権」についてですが、正確には「進化論もどき系カルト宗教ビジネスの利権」でしたね。訂正しておきます。そしてそういったカルト宗教と対峙しているのも主に伝統的な宗教がやっているわけです。
「それはすでに科学的に否定された説だ」とか「それは科学ではない」という説明だけでは、政治的には弱いわけです。
 プロテスタント右派の強い支持を得ているブッシュは、おそらく(スペイン語を話せる最初のアメリカ大統領だそうで)カソリックのヒスパニックも視野にいれての、ID論の発言となっていると思います。
 アメリカ政府の予算から研究費(特に軍事系は多いそうです)をもらっている科学者がそれをなげうってまで「ブッシュの信仰もカルト宗教だ」なんて感じのことを言うことには相当勇気がいる。口をつぐんで研究費をもらって自分の研究に没頭しているほうが楽ですからね。ただ単に「ブッシュが馬鹿」なだけなら延々とアメリカで論争が続いているわけがないでしょう。
 進化論の側が「宗教や政治は専門が違う」とか、いって逃げていると、ID論側の政治的に力を得てくるわけです。

妥協はあるか

 心情を正直に書くと、フレドリック・ホイルに相当期待していたんですが、なくなってしまいました。
 進化論は「天文学的スケールの機械論的イベント(太陽活動の変化とか、彗星の衝突とか)」が地球上の生物の進化に影響を与えた可能性自体は排除していないですよね(id:anemonefishさんはそんなものは仮定しなくても説明可能だ」という立場のようですが)。太陽系レベルならば火星での調査とかでも検証可能なわけで、それならそういった仮説を学校で教えて、ID論は公立学校の敷地外でおこなうBible Classとかで教えるといった妥協(裏取引)も可能になるとおもいますが、どうでしょうか。
 
 ID論争は「科学の国アメリカを理解する上で極めて重要」な論争であるという立場は崩しませんので、できればあきれずにまたコメントください。

 あと、このブログの宣伝なのですが、他にもいろいろとトンデモ学説をいろいろと書いているので、ツッこんでやっといてください。酔った勢いで書いたエントリーとかもあるのですが、それなりには準備してありますので、できる限り、お答えします。