アメリカとは何か
前にも書いたが、ファウンデーションシリーズは「ローマ帝国衰亡史」をモデルにしたのではなく、アシモフはギボンの続きを書こうとしただけだ。
ターミナスの独立がアメリカ独立の物語であることは誰でもわかるし、ミュールがヒトラーを、
生き残った帝国はロシア帝国をあらわしていることはあきらかだ。
ファウンデーションが、かかれたのは第二次大戦後すぐ、アメリカが世界帝国となって、ソ連と対立していく時代に、その世界の裏面の構造を密に伝えている。
そもそもイスラエルの件があるから歴史書として直接的な書き方をするのは不可能だったろうし、SFとして書くしかない。
1453年以降も西ヨーロッパ人はローマ帝国の滅亡を理解していなかった。
理解していたのは旧ローマ帝国の亡命知識人たちだけだったろう。かれらこそ近代文明のファウンデーションだった。
辺境をもとめてさまよい、やがてアメリカにたどりつく。アメリカはローマ帝国を強烈に意識している。
ファウンデーションとアメリカ史をセットで読めば世界帝国アメリカの秘密がいろいろとわかってくる。
ならばハリセルダンのモデルが誰だったかが問題になるが、これがノストラダムスだというのが第二の論点。
アシモフが、ノストラダムスの計画の真の意味をどの程度理解していたのか。
ファウンデーションシリース初期3部作が衰亡史以降の400年の近代史をなぞっていることをある程度は意識していたとおもわれる。
冷戦終了とともにアシモフはファウンデーションシリーズの続きを書きはじめる。
冷戦構造をローマ帝国史観のもとに描いていたのだから当然だ。
中身はローマ帝国の継承者として勝ち残ったアメリカの悩みが書かれている。
文明の継承者というのは大変である。
そうなると日本人としてはローマ帝国と中華帝国との2000年越しの対決はどうなんだとおもうが、これは田中芳樹なんだろうな。
あっちからもこっちからも辺境な立地で、妥協的な立憲君主制で運営されているジャパン藩。
文明はウイルス性の病気の一種かも知れないということに自覚的に生きることって可能なのか。