ベトナム戦争と「プレデター」

 「プレデター」はベトナム戦争でアメリカ軍が体験した恐怖感をシンボル化したモンスターである。
 ベトナム戦争時、ベトコンとの戦いはアメリカ軍の世界観を揺さぶった。ジャングルの恐怖。「都会のジャングル」という言い方をする。逆に言えば、都会は全くジャングルとは正反対だから、「都会のジャングル」という言葉が出てくる。では、どちらとも全く違う、他の世界があるのか、ある、海上とか草原とか砂漠である。実はそれが、ベトナム戦争までアメリカ軍が戦場として考えてきた世界である。ところが、東南アジアのジャングルは全く違う世界であった。ベトコンはジャングルの中に住み、ジャングルの中の植物を取って食べる。つまり、補給・後背地はない。また、武器もジャングルの中で、落とし穴を掘ったり、米軍の墜落したヘリの金属一部を加工したりしていた。ジャングルと一体化して攻撃してくる見えない敵は、いつ、どこから襲ってくるか分からない。ベトコンに振り回され、まるでジャングルそのものが、アメリカ軍に敵対しているかに見えた。それで枯葉剤を撒いたのだ。「プレデター」はこの恐怖体験に基づいている。
 「プレデター」には続編がつくられており、そこではこのモンスターはアメリカへやってくるのだ。
 このモンスターはエイリアンの一種ということになっている。映画「エイリアン」はベトナム戦争後に作られ、その後もアメリカで数多くのエイリアン映画がつくられていく。同時に社会には(とても人間とは思えない「きっとエイリアンがやったんだ!」)凶悪な殺人事件やエイリアンに誘拐された人々が登場してくる。ベトナム戦争によってアメリカ人はついにヨーロッパ人から分かれて、エイリアンという独自のモンスター文化を持つようになったのだ。
 東南アジアのジャングルには水木しげるのゲゲゲな世界がひろがっている。水木しげるはマレーシアだったが、アメリカ軍はベトナムでこの東南アジアのジャングルと出会った。おお、そうだ、これで妖怪とエイリアンの関係がわかる。両者ともにジャングルに対する距離感・スタンスが込められているのだ。
 これで「モンスター大統一理論」の完成に一歩近づいた。