Hindy Quest

はじめてのたたかい

10年後の新世界秩序

十年一昔という。
湾岸戦争が12年前なので、「イラク戦争」と比較してみたくなるかも知れないが、じつのところ、ソビエト帝国の崩壊がひとつの節目だった。
当時ブッシュ(父)は「新世界秩序」という言葉で、アメリカの世界戦略を示した。
この「新世界秩序」にはNPT,IMF,WTOという3本の柱があったが3つともすでにうまく行かないことがはっきりしてきた。
核保有国を増やさないはずのNPTはインド・パキスタンそして北朝鮮の核保有と脱退によって、事実上瓦解した。
金融秩序をつくるはずのIMFはアジア危機以後の経済締め付けによって、信頼を失った。
貿易秩序をつくるはずのWTOは中国の加盟で、過渡期をむかえ、FTA(二国間貿易自由化協定)の増大によって、意味が変質してきた。

テロというそれまでの軍事常識だけで対応できない戦争が重要性を増し。通信ネットワークの発達が、国家の枠を使ったシステムにどんどん風穴をあけていく。
対テロ戦争」を掲げるアメリカは国家本土安全省という、巨大官庁を作り、マネーロンダリング規制などを図るが、タックスヘイブンという自分たちの宝島に手をつけられないでいる。
すでに「中東民主化」という途方もない目標を掲げた。現代文明もいよいよ引き返せないところまできてしまった。

********中東とヨーロッパ*******

イラク戦争」はすでに終わった。そして、これはアメリカのこれからの「10年戦争」のなかでは、初期の通過点のひとつにすぎない。
すでに「イラン戦争」の前哨戦が、大々的に始まっている。というより、そもそもイスラエルは最初からイランを最大の敵とみなしている。ブッシュ政権も「悪の枢軸」のリストにイラクとともにイランを入れ続けている。(そこに後から北朝鮮が格上げされて、加わった)イスラエルべったりのブッシュ政権は「イラン戦争」に引きずり込まされつつある。ブッシュ政権は、北朝鮮問題を口実にして、「イラン戦争」を回避して、ゆっくりとした戦略に切り替えていくほうがいいとは思うが、それは(ブッシュにはできなさそうなので)イギリス外交の役割になるだろう。そこでエリザベス女王の健康状態が気になる。女王の死後もイギリスは、今までのような対米外交を維持し続けるのか。「アメリカを孤立させない」イギリスの外交方針は第二次大戦以後一貫していて、これが女王の意思であることは、あきらかだ。はたして、3ヶ月に一回づつ世界から孤立するアメリカは、なんとか世界帝国としての面目を保ってきた。
それが、女王の死後にも、続くのか???巨大な不安定要因だ。
イギリスと日本とが共同開発中のアザデカン油田(イラン側のイラク国境にある)はどうなるんだろう。アメリカべったりに見える日本の政治だが、皇室の留学先も小泉首相の留学先もイギリスであり、
小泉はブレアのアドバイスでアメリカに対する態度を決めたのではなかったか。そもそもイラクの石油をほしがったのはイギリスだ。
フランスはアメリカにもイギリスにも対立していない。フランスはアメリカとイギリスの間を切り離そうとしているだけだ。原子力マフィアが力を持つフランスが石油マフィアが力を持つアメリカと、経済的利害は、ぶつかっても、政治的には、ほとんど同じような考え方をとるので(世界中で繰り返してきた残虐行為も似ているが)最終的にイラク統治に加わっていくだろう。

*****東アジア*******

アメリカ幕府の下級官吏が「第二次朝鮮戦争」のシナリオも書いているが、日本のメディア以外に相手にしてもらえない。
ブッシュに選択の余地はないはずだ。まず、在韓米軍を引き上げることだ。アメリカ中枢は北朝鮮の核保有を確信している。
しかし、在韓米軍を引き上げるのに時間がかかるので、公式に認めていないのだ。在韓米軍を核の的にしたら、責任は重大である。アメリカ帝国にとって常にもっとも恐ろしいのはアメリカ軍の反乱である。ベトナム戦争では、帰還兵がデモに立ったため、警察では手に追えず、アメリカは内乱になりかかった。
在韓米軍の移転先としてフィリピンに基地を建設する計画がすすんでいる。
去年、確かにアメリカと北朝鮮の間に緊張が高まったが、イラク戦争を始めてしまった以上、アメリカはもう引き返せない。「第二次朝鮮戦争」はペンディングである。
一旦、戦争を始めて、そのまま「アメリカ対中国」の戦争になったら、動きがつかなくなってしまう。
日本、中国、韓国など、周辺諸国にまかせてしまおうとしている。そして、もっと高いところから管理しようとしている。
金正日には中国もそうとう手を焼いている。おかげで、日中間で話がまとまる。本来ならありえない、外交の変化だ。
中国の経済発展で日中間でのさまざまな対立が高まってきていたが、金正日のおかげで、対話の糸口ができた。
金正日は、実に使える人材だ。開発スピード、意思決定の速さ、巧みなマーケティング経営管理能力がすごい。本当に利用価値が高い。

******新世界秩序********

アメリカはこの「10年戦争」に勝てるのか、もし負ければ、世界帝国アメリカは崩壊してしまう。アメリカは内乱になる。また、勝ったとしても、今のままの世界秩序ではありえない。
元大統領候補のゴアがアップル社の副社長になった。ゴアが出てきたら、アメリカの政治が大混乱になるので、これは口封じの一種だろう。
日本はアメリカを支持し続けたほうびに、アカデミー賞がもらえて喜んでいる。かわいい国民だ。

一元てきな強力な原理による、硬質の秩序と異なる、「柔らかな秩序」が、はたして、われわれの使っている言葉で表現可能なのだろうか?
電波天文学ガイア仮説を産み落としたように、ニュートリノ天文学が、あらたな生命宇宙観を成立させたとしても、われわれの使う言葉そのものが、直線的な思考を規定している。


ソビエト崩壊による力の空白をユーシア西部ではEUが埋め、アフリカで、フランスがアメリカとぶつかっていた、そして、ユーラシアの中央と東における秩序作りは、アメリカもヨーロッパも後回しにした。
当然、力の空白にイスラム、中国、北朝鮮などが割り込んでくることになったのだった。ソビエトで生まれ育った金正日を指導者として戴く北朝鮮が、ギリギリの割込みをかけることに成功したのに不思議はない。これまで成功してきても、今後成功し続ける保証はないが、ここまでは、とにかく成功している。
巨大な帝国が崩壊するとき、かならず、その力の空白をめぐり、継承戦争が起こる。
大日本帝国の崩壊後、国共内戦や、朝鮮戦争が起こり、約十年で権益の配分が決まった。ソビエト帝国の崩壊後、十年が経ったわけだが、アフガニスタンという、
微妙な場所が、セキュリティーホールになってしまった。それは偶然ではない。


力は昔から存在している。われわれは、力による政治をいまだ乗り越えるにはいたっていない。